土木デザイン設計競技 景観開花。2015

About

企画要旨

 高度経済成長期の日本では、早急な社会基盤整備が求められ、場所性を無視した画一的な土木構造物が多数生み出された。しかし、インフラ施設がある程 度拡充した現代においては、「量」から「質」への価値転換が行われ、その場所が持つ意味・役割に合わせた土木デザインを求める機運が高まりつつある。 そのため「景観開花。」では、土木デザインに関心のある若者がその力を試せる場所を提供するとともに、多くの人々へ向けて土木デザインの可能性を示すという趣旨のもと、土木構造物を設計テーマに据えて設計競技を実施してきた。

 近年において「景観開花。」は生活の基盤である『まち』を主軸においたテーマ設定を続けてきた。特に昨年度は、「土木構造物のカテゴリーを指定し、その中で『まち』をよくする提案」を求める従来のテーマ設定から、「『まち』 の理想をテーマに掲げ、その理想を実現させるための土木デザインの提案」を求めるテーマ設定へと方針を一新した。土木構造物のカテゴリーを指定しないことで、より自由な発想から『まち』への提案を求めるためである。

 そこで今年度の「景観開花。」も昨年度のテーマ設定方針を継承し、『まち』 についてのある「理想」をテーマとして設定する。応募者にはその理想を実現させる土木デザインの提案、また理想を実現させた『まち』の未来について各自の想いを巡らせて欲しい。50 年、100 年と長期間その役目を全うする土木構造物だからこそ、土木デザインには『まち』の未来を変える可能性が秘められているのではないだろうか。

 最後に、「景観開花。」を通して東北の地から発信されたアイデアが、これからのより良い生活、そして復興への一助となることを切に願っている。

平成27年7月13日
景観開花。実行委員会

設計テーマ

「活かす」

(詳細は募集要項をご覧ください。)

審査方法

一次審査会を行い、審査委員は入賞作品(5点前後)を決定する。後日、公開最終審査会を開催し、入賞者は作品解説とそれに対する質疑応答を行う。審査委員はそのプレゼンテーションを踏まえ,最優秀賞と優秀賞を決定し講評を行う。

審査日程

エントリー受付開始平成27年7月14日(火)
エントリー締め切り平成27年10月9日(金)→16日(金)
作品提出締め切り平成27年10月23日(金)→30日(金)
一次審査会平成27年11月7日(土)
公開最終審査会平成27年11月28日(土)

賞金額

最優秀賞1点20万円
優秀賞1点10万円
佳作数点4万円
特別協賛企業賞数点2万円
参加賞全作品審査委員からのコメント

審査委員紹介

篠原 修

篠原 修

Osamu SHINOHARA

土木設計家
東京大学名誉教授
景観開花。2015 審査委員長

詳細

1945年生まれ。
政策研究大学院大学名誉教授・客員教授
エンジニア・アーキテクト協会 会長
GSデザイン会議 代表
(景観開花。審査委員長:2004年~)

主な受賞歴

2010年土木学会デザイン賞 最優秀賞(新豊橋)
2009年鉄道建築協会賞停車場建築賞(JR四国・高知駅)
2008年ブルネル賞(JR九州・日向市駅)
2008年土木学会デザイン賞 最優秀賞(苫田ダム空間のトータルデザイン)
2004年グッドデザイン賞 金賞(長崎水辺の森公園)
ほか

主な著書

内藤廣と東大景観研の十五年(鹿島出版会、2013年)
ピカソを超える者は―評伝 鈴木忠義と景観工学の誕生(技報堂出版、2008年)
景観用語事典 増補改訂版(彰国社、2007年)
ほか

関連するページ

エンジニア・アーキテクト協会 メンバー紹介
政策研究大学院大学 教員・所属研究者情報

五十嵐 太郎

五十嵐 太郎

Taro IGARASHI

建築評論家
東北大学大学院教授

詳細

1967年生まれ。
あいちトリエンナーレ2013 芸術監督
第11回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展 日本館コミッショナー
(景観開花。審査委員:2007年~)

主な受賞歴

2014年文化庁芸術選奨新人賞(あいちトリエンナーレ2013 揺れる大地)
ほか

主な著書

レム・コールハースは何を変えたのか(鹿島出版会、2014年)
ようこそ建築学科へ!建築的・学生生活のススメ(監修、学芸出版社、2014年)
窓と建築の格言学(フィルムアート社、2014年)
おかしな建築の歴史(エクスナレッジ、2013年)
〈建築〉という基体―デミウルゴモルフィスム 磯崎新建築論集 第4巻(岩波出版、2013年)
建築学生のハローワーク 改訂増補版(彰国社、2012年)
近代建築史(共著、2008年、市ヶ谷出版社)
ほか

関連するページ

東北大学 五十嵐太郎研究室

木下 斉

木下 斉

Hitoshi KINOSHITA

一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事
内閣官房地域活性化伝道師

詳細

1982年生まれ。
熊本城東マネジメント株式会社 代表理事
一般社団法人まちづくり役場とくしま 理事
総務省 地域人材ネットメンバー
経済産業省 タウンプロデューサー
独立行政法人都市再生機構 まちづくり支援専門家
ほか
(景観開花。審査委員:2014年~)

主な受賞歴

2013年The Journal of Urban Regeneration and renewal(英国・地域再生ジャーナル): "Challenges in District Management in Japanese City Centers"
2000年新語流行語大賞(「IT革命」)
ほか

主な著書

稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の法則(NHK出版新書、2015年)
PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた(共著、学芸出版社、2015年)
まちづくり:デッドライン(共著、日経BP、2013年)
まちづくりの「経営力」養成講座(学陽書房、2009年)
ほか

関連するページ

経営からの地域再生・都市再生(個人BLOG)
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス

西村 浩

西村 浩

Hiroshi NISHIMURA

建築家・デザイナー
株式会社 ワークヴィジョンズ 代表取締役

詳細

エンジニア・アーキテクト協会 副会長
GSデザイン会議 運営幹事
株式会社リノベリング 取締役
東京藝術大学 非常勤講師
佐賀県美しい景観づくりアドバイザー
群馬県景観審議会委員
富岡市世界遺産まちづくり会議委員
函館市美しいまちづくり検討会アドバイザー
山梨県景観アドバイザー
甲州市景観アドバイザー
ほか
(景観開花。審査委員:2005年, 2008年~)

主な受賞歴

2014年第14回公共建築賞生活施設部門(岩見沢複合駅舎)
2013年グッドデザイン賞(佐賀「わいわい!!コンテナ」プロジェクト)
2011年ブルネル賞(岩見沢複合駅舎)
2010年第51回BCS賞(岩見沢複合駅舎)
2010年日本建築学会賞 作品賞(岩見沢複合駅舎)
2009年グッドデザイン賞 大賞(岩見沢複合駅舎)
2008年土木学会デザイン賞 優秀賞(鳥羽海辺のプロムナード「カモメの散歩道」)
2004年グッドデザイン賞 金賞(長崎水辺の森公園 常盤出島橋梁群)
ほか

主な著書

駅・復権!:JR岩見沢複合駅舎誕生とまち再生への軌跡(共著、岩見沢複合駅舎完成記念誌製作委員会、2010年)
ほか

関連するページ

株式会社 ワークヴィジョンズ
エンジニア・アーキテクト協会

八馬 智

八馬 智

Satoshi HACHIMA

土木デザイン研究家
千葉工業大学工学部デザイン科学科 准教授

詳細

1969年生まれ。

専門は土木構造物や公共空間のデザイン、都市景観、産業観光など。
建設コンサルタントに勤務した後、千葉大学工学部デザイン学科を経て現職。
(景観開花。審査委員:2015年)

主な受賞歴

2011年土木学会デザイン賞 奨励賞(札幌みんなのサイクル ポロクル)
2003年土木学会デザイン賞 優秀賞(小樽市 堺町本通)
ほか

主な著書

ヨーロッパのドボクを見に行こう(自由国民社、2015年)

関連するページ

千葉工業大学デザイン科学科
何かからはみ出した、もうひとつの風景(個人BLOG)

(敬称略/五十音順)

審査委員メッセージ

篠原 修 先生(審査委員長)

今の若者は携帯あるいはスマホを手放せないのだと聞く。その理由は仲間外れになるのが怖いらしい。始終連絡をとっていないと不安になるのだとも言う。それ程までに個人が粒状化して、人間関係がサラサラと、砂が流れるように疎遠になっているのが今の社会なのかもしれない。「右と言えば右」「左と言えば左」に従うのが今の時代の人間なのだろう。 今は流行らないが僕の青春時代には「反骨」という姿勢が存在していた。「右と言われれば左」「左と言われば右」と言う生き方であった。要するに大勢には逆らうという生き方である。そこから新しいものが生まれる。そういう提案を期待する。

五十嵐 太郎 先生

景観開花。は、アイデア・コンペなので、できれば、アイデア・コンペだからこそ出てくるような案を見たいと思います。例えば、それは「正しい」優等生的な問題解決を提示するというよりは、実際のプロジェクトでは難しいとされるアイデアやデザイン、あるいは常識とされているような前提を疑うことです。審査員が昨日まで考えていなかったような案で、新しく考えるきっかけをつくってください。

木下 斉 先生

日本は縮小社会に入りました。単に土木開発を行えばまちが栄えることはなく、時にはまちを滅ぼすことさえあるのが、 巨額の公費を投入する土木開発です。漠然とした利用ではなく、ターゲットをイメージし、日本の縮小する都市の経済的、財政的な限界を意識した上での提案を期待します。

西村 浩 先生

郊外へとひたすら拡大してきた都市も、いまや820万戸の空き家を抱え、虫食い状態に空き地が増える状況にあります。車のための道路も今以上には不要なことは明らかで、歩くための道への再編集が求められています。人口減少の時代を迎え、都市をつくる時代からマネージメントする時代へと変わったのです。「活かす」ものはなんなのか?「活かす」ことで生まれる、まちやそこに暮らす人々にとっての幸せとはなんなんなのか?これからの時代を生きる若者たち自身が「じぶんごと」として考える、21世紀に相応しい新しいアイデアを楽しみにしています。

八馬 智 先生

「まち」を支えるインフラの多くは、そこに暮らす人々の意識からどんどん遠ざかっているように感じます。質の高い意識付けができれば、知らないことの幸せを越えた深い相互理解に結びつくのではないでしょうか。その実現を企てることは、「デザイン」を考えることに他ならないと思います。

私はみなさんのアイデアに込められた「まち」と「人」の関係から、既存の価値観を乗り越えようとする観点、社会環境の変化などの時間の経過に対する強度、もの・空間・関係のバランスから生まれる「面白さ」などを汲み取ることを楽しむつもりです。

(五十音順)